今回は犬の精巣の位置と去勢手術に関してお話したいと思います。精巣の位置?と疑問に思われた方もいるかもしれませんが、犬では精巣が正常な位置に降りてこない、いわゆる「陰睾」が意外に多いのです。
精巣はもともとお腹の中で発生します。その後成長の過程で鼠径管と呼ばれる股の管を通って陰嚢内に降りてきます。ほとんどの子は正常に降りてきますが、降りてこない子もいます。
そこでこの記事では、精巣の位置と去勢手術について詳しく書いていきます。
精巣がお腹の中にとどまっている場合
まず最初は精巣がお腹の中にとどまっている場合です。お腹の中にとどまっている場合には、「腹腔内潜在精巣」と呼びます。
経験的には、どちらか一方の精巣がお腹の中に残り、片方は正常な位置にあるケースが多いです。
腹腔内潜在精巣の場合、いずれかの時期に去勢手術を行うことを推奨しています。理由としては2つあり、一つは繁殖に使うことは遺伝的な理由により推奨されないからで、2つ目は腹腔内潜在精巣は正常な精巣に比べて10倍腫瘍化するリスクが高いからです。
2021年に駅前通り動物病院に勤務を開始してから3頭の腹腔内潜在精巣の手術を実施しましたが、内訳は以下の通りです。
①腹腔内潜在精巣の腫瘍化及び精巣捻転による緊急手術
②腹腔内潜在精巣の摘出手術が2件
下記の2件は緊急手術ではありませんでしたが、1件は腫瘍化したことで精巣捻転を起こした子で、重度の痛みから緊急手術を実施しました。
お腹の中の精巣に関しては、大きくなっても定期的にエコー検査等で検査をしない限り見つけることができません。
そのため、腹腔内潜在精巣の場合、早期に手術をすることをおすすめします。
当院での腹腔内潜在精巣の手術までの流れをご紹介します。
手術をする前に腹部エコー検査で精巣の位置を確認します。ほとんどの症例がおちんちんの横くらいの位置のお腹の中にあります。
術前に確認する理由は、最小の傷で精巣を取り出す目的です。
インターネット等で「犬 潜在精巣」等を検索すると腹腔鏡での摘出などが出てくることがあります。しかし、術前にエコーで正確な位置が分かっていれば、下記の画像のように通常の去勢手術と同じレベルの切皮でお腹の中の精巣を摘出することができます。


精巣が鼠径部にある場合
精巣が鼠径部に存在する場合の対処法を説明します。精巣が鼠径部にある子は、触診で容易に触れます。そのため、すぐに去勢手術をご希望されない方に関しては、精巣の触診方法をお伝えしています。
万が一、精巣が大きくなってきたり、硬くなってきたら摘出しましょうねとお話しています。大きくなれば、なるほど摘出する際に大きく切皮する必要があり、体にとって負担になってしまいます。
ちなみに精巣が鼠径部にある場合も精巣は未熟であることが多く、正常な精巣に比べて小さいことがほとんどです。しかし、腫瘍化することで腫大してきます。
鼠径部に精巣がある場合の手術痕は以下の写真のようになります。ちなみに位置にもよりますが、通常の去勢手術と同じ傷口から精巣を摘出できる場合もあります。その場合は、傷口は1つで済みます。


精巣が正常な位置にある場合
精巣が正常な位置にある場合には安心してください!!精巣ホルモン特有の発情行動が許容できる場合や誤交配等を確実に予防できるのであれば去勢手術は絶対にしないといけないわけではありません。
正常な位置にあったとしても腫瘍化するリスクはあり、精巣に関連した病気になる可能性はあります。
去勢手術を考えているなら、生後半年前後で手術は可能です。この時期は、まだ精巣ホルモンによる行動(マウンティングやマーキングなど)が本格化しておらず、精巣もまだ小さめなので傷口も小さく済むのでおすすめしています。
去勢手術をすると予防できる病気を列挙しておきます。
・精巣腫瘍
・肛門周囲腺腫
・会陰ヘルニア
・精巣の病気(精巣上体炎、精巣捻転など)
・前立腺の病気(前立腺肥大、前立腺炎など)
ちなみに私は、上記の病気すべてに出会ったことがあります。
前立腺の病気に関しては以下の記事を参考にしてみてくださいね!!

まとめ
・精巣の位置は陰嚢内、鼠径部、腹腔内の3か所があり得る
・腹腔内潜在精巣は正常の精巣と比較して10倍の腫瘍化リスクがある
・腹腔内潜在精巣、鼠径部精巣は遺伝するため、また精巣機能が未熟なため繁殖に供することは推奨できない
・去勢手術を実施することで予防できる病気は多い
男の子の犬を迎え入れたら、必ず精巣の位置をチェックしておきましょう!どこにあるか不安な方はぜひ動物病院に相談してくださいね。






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