【獣医師が執筆】犬の全身麻酔は高齢でも大丈夫?リスクはあるの?

東大宮にある駅前通り動物病院では、日々数か月齢の子犬、子猫から20歳くらいの高齢の子まで様々な犬と猫の全身麻酔を行っています

全身麻酔は、あくまでも目的を達成するための手段であり、目的にはなりえません。そのため、全身麻酔をかける理由が存在するはずであり、その理由にご家族が納得できるかどうかも大切です。

特に高齢の犬や猫の歯石取りで「全身麻酔で行います」と言われると躊躇してしまう方もいると思います。

そんな全身麻酔ですが、高齢でも大丈夫かな?リスクはないのかな?麻酔後に亡くなってしまうこともあるのかな?と悩んでいる方に向けて獣医師の立場から解説します。

目次

全身麻酔下での犬の歯周病治療は何歳までできるの?

院長

年齢制限はありません!!臓器の機能、一般状態が重要ですね!
麻酔前評価を行い、リスクを洗いざらいします。

答えは「何歳でもできる」です。ただし、全身状態によります

我々の病院では、歯周病治療を高齢だからという理由で断ることはありません。なによりも重要なことは一般状態が良いのか、悪いのか、臓器の機能はどうなのかを重要視しています。

つまり、若くても心不全を発症していたり、感染症で瀕死の状態であったり、末期の腎不全、肝不全等がある場合には、麻酔のリスクは上昇します。

ただし、重要なことはその臓器の機能がどの程度残っているかです。

例えば、末期の腎不全で、食欲もなく、重度の脱水がある子だと、麻酔リスクは高くなります。つまり、麻酔をかけなかったとしても寿命が数週間レベルの状態であれば、全身麻酔をかけるメリットは正直ありません。

しかし、一般状態が落ち着いていて、初期の腎不全くらいであれば、適切な麻酔管理ができれば、麻酔リスクはそれほど高くなりません。

必要があれば、入院して点滴を流しながら、麻酔をかけることもあります。相当の準備をすることが大切なのです。特に麻酔の知識は獣医師の経験・知識に大きく左右されます。

駅前通り動物病院の院長の吉野は大学時代に麻酔学の研究に従事しており、学生時代に獣医師に混ざって、麻酔ブートキャンプという獣医師向けの勉強合宿に参加した経験があります。

また、学生時代に、成育医療研究センターで同種肝臓・腎臓移植手術の麻酔管理を多数研究した経験もあります。

そのため、通常の獣医師が経験することがないような麻酔症例を多数経験してきていますので、より安全な麻酔を提供することができます。

麻酔が安定しなければ、即座に麻酔を中止する勇気も必要なのです。実際にそのような経験もあります。全身麻酔で迷っている方はぜひかかりつけの先生に麻酔について聞いてみて下さい。

全身麻酔に詳しい獣医師はどんな人が多い?

院長

どんな時も冷静なタイプな人かな・・・
あとは視野が広い人!!

全身麻酔は非常に奥が深いです。実は犬の全身麻酔はめちゃくちゃ簡単です。血管を確保して、麻酔導入薬を注射するだけで全身麻酔をかけることができます。

そのため、獣医師であれば、誰でも全身麻酔をかけることができます

ただ、麻酔をかける犬の性格、一般状態、麻酔をかける目的、臓器の機能等によって、使う薬剤の量、いれるタイミング、速度などまったく同じ麻酔管理は存在しません。

常に現状を把握し、未来を予測する力が必要です。必要があれば、麻酔を中断することができる能力も重要です。麻酔をかけても麻酔中に亡くなってしまったら意味がないですから。

そのため、個人的な意見ですが、「常に冷静なタイプの人、視野が広いなと思う人は麻酔に向いている」と思っています。

現在のところ、日本では獣医麻酔専門医制度は確立されていませんので、正直どの先生が麻酔に詳しいのか選ぶことはできません。

そのため、麻酔についてどれだけ意見を発信しているかや、説明してくれるかが大事かもしれませんね。

皆さん、全身麻酔を必要以上に恐れてしまっている気はします。私からすれば、健康な10歳の犬が歯周病治療で全身麻酔をかけるのと、6か月齢で避妊・去勢をするのはほぼ同じ感覚です。

それなのに、全身麻酔が漠然と怖いという理由で治療が手遅れになるケースをたくさん見てきました

もちろんゼロリスクはあり得ません。ただ、限りなくゼロなのです。正しく恐れましょう。

事前に予測することができない犬の麻酔リスクは?

犬の麻酔リスクには、予測できるリスクと予測できないリスクがあります。

予測できる麻酔リスクの例

聴診で心雑音があり、ある程度の心臓病があることが分かっている場合
➡輸液量の調節、心拍数のコントロール、心臓の収縮力のコントロールにてリスクを下げることができる

軽度の腎不全があることが分かっている場合
➡全身麻酔の前日等から、静脈点滴で入院してもらい腎数値が改善したタイミングで全身麻酔を行う。術後も腎臓の機能チェック、点滴を行うことでリスクを下げることができる

重度歯周病等で食欲が低下している場合
➡麻酔前から抗生剤や痛み止めを使用することにより、歯周病をある程度治療してから麻酔をかける

予測できないリスクの例

麻酔薬に対する薬剤性アナフィラキシーショック
➡ワクチンアレルギーと同様に麻酔薬に対するアナフィラキシーショックもあります。これは麻酔前検査で予期することができません。我々獣医師は万が一のために、ショックの対応を即実施できるように準備しています。

麻酔中の突然の不整脈
➡一般的に全身麻酔は心臓の機能を抑える傾向にあります。そのため、理論上は心臓保護に働くのですが、まれに不整脈が発生することがあります。致死性不整脈でない場合や血圧に影響がなければ、様子をみることもあります。不整脈が止まらない場合には、抗不整脈薬の使用、麻酔の中止を即断します。

このように、我々獣医師は予測できるリスクは正しく恐れ、予測できないリスクは準備することで恐れを減らしています

なかなかリスクを正確に数値化することは困難ですが、麻酔により亡くなるリスクが10%ある場合には、ほとんどの獣医師は全身麻酔を延期、中止するはずです。

入院する、内科的に治療する等をして、麻酔リスクを1%でも減らして麻酔をかけるはずです。

もちろん子宮蓄膿症や腹膜炎等の外科的治療が必要な場合には、リスクを背負ってでも全身麻酔をかけることもあります。しかし、歯周病の治療で一分一秒を争うことはほとんどないと思いますので、「待機的手術」と呼ばれます。

全身麻酔が怖いなと思ったら、くれぐれも手遅れになる前にお話しだけでも聞いてみて下さい!!

特に歯周病の場合、先延ばしにすればするほど、全身麻酔のリスクや治療難易度の上昇、治療費がかかってきますので早めに相談してくださいね!

犬の全身麻酔後はどんな状態なの?

Aさん

先生!
全身麻酔の後ってどんな感じなんですか?

院長

処置の内容にもよりますが、侵襲度の高い手術の後ほど、ぼーとしていることが多いかもしれません。
でもこれは一緒に使っている痛み止めや鎮静剤の影響も一部あります。

Aさん

麻酔後に犬が元気なかったらどうしたらいいですか?

院長

非常に難しい質問ですね。どのような目的のために全身麻酔をかけたかにもよります。
例えば、多数の抜歯を含む歯科処置を行った場合には、2,3日元気がないことが多いです。
逆に、去勢手術等の軽度の処置後2,3日ぐったりしている場合には何らかの合併症の可能性もあるかもしれません。

院長

そのような場合には、ネットで情報を調べるよりも担当した獣医師に相談するのが一番だと思います。
もし納得いかない対応であれば、別の動物病院に相談するのもひとつですが。

犬の全身麻酔後の状態を心配される方はとても多いと思います。全身麻酔といっても一般的には吸入麻酔薬が全身麻酔の維持に使用されます。この吸入麻酔ですが、体内ではほとんど代謝されないため、吸入麻酔を止めれば、麻酔からは覚めます。

日帰り手術等でお返しする際によく「元気なく見えますが、麻酔からは覚めていますか?」と聞かれることがありますが、「少しぼーとしていますが、麻酔薬は体内から抜けていますよ」と説明しています。

基本的には、我々獣医師もお返ししても大丈夫な状態でお返ししていますので、場合によっては入院して頂くこともあります。

参考までに!!

駅前通り動物病院での歯周病治療の特徴

丁寧でわかりやすい治療説明

犬の歯周病治療には全身麻酔が必要であり、気軽に実施できるものではありません。

そのため、治療前に現状考えられる治療内容、治療経過等をじっくりと話したうえで治療に移ります。

これまでの治療経験等も画像や歯の模型等を使ってわかりやすく説明します。

歯科専用器具を完備

高性能超音波スケーリング、歯科用高速ドリル、歯科用レントゲン、歯科用サージカルルーペ等の最先端、最新の歯科専用器具を取り揃えています。

高倍率ルーペ、歯科用レントゲンを導入している動物病院はまだほとんどありません。

質の高い治療

駅前通り動物病院で犬の歯科治療を2021年に開始してから100頭以上の歯周病治療を行ってきました。

また、常に犬にとってより負担の少ないかつ効果的な治療方法を追求し続けています。

ご家族が納得できる、満足できる治療を提供し続けています。

可能な限り、生涯での麻酔回数を減らせるような治療方法をご提案しています。

治療後のデンタルケアサポート

歯のメンテナンスの仕方を必ずサポートします。

いきなり歯磨きを指導するのではなく、まずは顔周りのマッサージから。

徐々にステップアップできるようにアドバイスしています。

一方通行にならないように必ずご家族との対話を大事にしています。

駅前通り動物病院での歯周病治療の流れ

STEP1 診察(口の中、全身チェック)

歯周病治療では、まずは視診を行い、大まかな口の中の状態を確認します。歯の本数や、生え方、動揺の有無、歯石の付着具合、歯肉の炎症の程度、歯肉ラインなどを確認します。

また、あわせて全身の状態の確認も行います。口の中以外の異常がないかを確認します。

この時点で、大まかな治療の内容、治療後のフォローアップ、費用等のお話を丁寧に説明します。

STEP2 麻酔前検査(当日実施)

全身麻酔をかける前の評価を実施しています。これは当日に実施することが多いです。主に、血液検査、胸部レントゲン検査、エコー検査で心臓や肝臓、腎臓等の主要な臓器機能を評価します。

麻酔前検査で明らかな異常が認められなかった場合は、全身麻酔下での歯科処置を実施します。

STEP3 スケーリング&歯科レントゲン検査

全身麻酔をかけたら、まずは口の中を観察します。その際に、歯周ポケットの深さや、歯の動揺の有無を確認します。その後、スケーリングを行い、歯に付着している歯石を除去します。歯石を除去し終わったら、必要に応じて、歯科用レントゲンを撮影します。

歯科用レントゲンは、歯の評価、歯を支えている歯槽骨の評価のために行います。

STEP4 必要に応じて抜歯等の処置

抜歯適応の歯がある場合には、抜歯を行います。抜歯には、歯肉切開をせずに抜く閉鎖法と歯肉切開を行い抜歯を行う開放法の2つがあります。

歯肉切開をせずに済む場合にはあえて歯肉切開は行っていません。どちの方法をとるかは、歯の状態にもよります。

開放法で抜歯をした場合には、歯肉縫合をします。吸収糸で縫合するため、抜糸の必要はありません。

歯科処置後の管理

歯科処置は、基本的には日帰りになります。麻酔後は鎮痛をしっかり行い、帰宅当日の夜からお水とご飯は食べられる状態でお返しするようにしています。

抜歯本数が多い場合や、全身状態に異常がある場合には1泊2日で実施しています。

処置の内容に応じて、今後のご自宅での歯のケアについてアドバイスをさせて頂きます。

歯周病治療の費用の目安

・麻酔前検査:10,000円~
➡血液検査、胸部レントゲン検査(必要に応じて心臓エコー検査、腹部エコー検査)

・全身麻酔代:10,000円~
➡静脈確保、点滴、抗生剤、鎮痛剤等

・スケーリング代:25,000円~
➡歯石除去、ポリッシング等

・抜歯代:10,000円~
➡本数、部位、歯肉縫合の有無により変動

例)軽度歯肉炎のみの場合(スケーリング、ポリッシングのみ)
➡50,000円前後~

例)中等度歯周病の場合(スケーリング、歯科用レントゲン、軽度の抜歯)
➡70,000円~

例)重度歯周病の場合(スケーリング、歯科用レントゲン、抜歯多数、歯肉縫合)
➡100,000円~150,000円

東大宮、大宮、土呂、上尾エリアで歯科処置を検討されている方、ぜひ当院へご相談くださいませ。

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