【獣医師が執筆】犬の膀胱結石の手術の難易度とリスクについて

動物病院では、犬の膀胱結石の手術を年間10件前後実施しています。膀胱結石自体は比較的よく遭遇する病気ですが、内科的に溶けない場合や、尿道に詰まっている場合などでは手術で摘出する必要性があります。

当院では、ほぼすべての膀胱結石の手術を日帰り又は1泊2日で実施しています。術後、数日間尿道カテーテルを設置するために数日間入院させる先生もいますが、私自身は尿道カテーテル設置のデメリットの方が多いと考えているため、日帰り又は1泊2日で実施しています。

そこで今回は犬の膀胱結石の手術の難易度とリスクについて解説していきたいと思います。

目次

犬の膀胱結石の手術の難易度は?

膀胱結石の手術自体は比較的シンプルです。

①麻酔後、尿道カテーテルを設置

②お腹を開ける

③膀胱を切開する

④結石を摘出する

⑤取り残しがないか確認し、終了

犬の膀胱結石の手術の難易度は、以下のような因子に影響を受けます。

・性別
➡男の子では、細かい膀胱結石が尿道に詰まってしまう可能性があり、小さな結石でも取り残し厳禁です

・結石の大きさ
➡細かい結石の場合、取り残しが起きやすくなります

・結石の数
➡レントゲン等で数えられる場合は取り残しの可能性が減りますが、小さい結石が無数ある場合、取り残しが起きやすくなります

早速、結石の大きさ、種類別の手術の難易度について解説していきたいと思います。(個人的な考え方によるものです)

実際の膀胱結石の見た目については以下の記事を参考にして下さいね!!

手術難易度★☆☆☆☆

比較的難易度が低い膀胱結石は上記のようなある程度の大きさの結石が1つか複数のタイプです。このような結石の場合、あらかじめ数が分かっているため、切開する大きさも結石の大きさ分でよく、計画通りに摘出できることが多いです。

もちろん、レントゲンに映らないような細かい結石が残っている可能性も考慮し、結石摘出後に肉眼で確認を行います。

手術難易度★★★☆☆

難易度が中くらいの膀胱結石は上記のような結石の数は数えられるが、尿道に入り込みそうな小さい結石があるタイプです。このような結石の場合、数が分かっていれば取り残す可能性は減りますが、膀胱を持ち上げた際に尿道に落ちてしまう場合があります。

そのような事態を防ぐため、あらかじめ尿道内には適切なサイズの尿道カテーテルを設置することで結石が尿道内に落ち込むのを予防します。

また、私の場合、落ち込むのを防ぐために、腰をやや浮かせた体制で手術を行うこと、お腹を切開する部位をやや尻尾よりにすることで、小さな結石が尿道内に落ち込みにくいようにして手術をしています。

手術難易度★★★★★

手術の難易度が一番高いと思う膀胱結石は、上記のような細かい結石が多数あるタイプです。このような結石の場合、事前に何個摘出すればよいかわからないため、取り残しが起きる可能性があります。

取り残しを限りなくゼロにするために以下のポイントに注意しています。

・事前に尿道カテーテルを設置し、手術前にレントゲン、エコー検査で尿道内に結石がないことを確認

・細かい結石を見逃さないように高倍率サージカルルーペ着用で手術を行う

・結石をスプーンで摘出後、尿道カテーテルから生理食塩水で洗い流す。尿道からと膀胱からの両方向洗い流す

・術後にエコー、レントゲン検査を行い、改めて取り残しがないかを確認

いかがだったでしょうか。膀胱結石と診断されて手術に迷っているという方のご参考になれば幸いです。

上記以外にも、術者のスキル、知識にも手術の難易度は関わってきますので、じっくりと先生と相談してくださいね!

犬の膀胱結石の手術のリスクは?

上記では、犬の膀胱結石の手術の難易度について解説してみましたが、ここからは手術のリスクについて解説したいと思います。

犬の全身麻酔に関するリスクについては別の記事で解説していますので、ぜひそちらをご覧くださいませ。

犬の膀胱結石の手術のリスクや合併症についていくつかお話したいと思います。

・結石の取り残し

・感染

・尿腹

・再発

結石の取り残し

犬の膀胱結石の手術は、膀胱結石の原因に対する治療ではなく、症状に対する治療です。つまり、膀胱内に結石があることで起こりうる膀胱炎や、感染、尿道閉塞などのリスクを回避するための治療であり、結石ができなくなるわけではありません。

そのため、結石の取り残しは手術の目的自体が達成できておらず、我々獣医師としては絶対に避けなければなりません。

そこで、上記の手術の難易度のところで解説した方法で、取り残しが絶対にないように手術を行っているのです。

感染

犬の膀胱結石の手術では、通常の手術とは少し異なり、感染にもより注意しなければなりません。体の粘膜とは消化器や呼吸器、生殖器などの器官の内側の表面にある膜で、粘膜は外界と接触しています

消化器であれば、様々な食べ物や水と接触しますし、呼吸器であれば空気中を漂う飛沫などと接触します。膀胱粘膜はおしっこと常に接触しています

通常であれば、おしっこは無菌ですが、膀胱結石がある場合、細菌感染を伴っている場合も多いです。そのような場合、膀胱切開した際に、おしっこがお腹の中に漏れ出てしまうと腹膜炎を起こすリスクもあります。

そのため、手術時にはあらかじめ抗生剤を投与したり、尿がお腹の中に漏れ出ないように膀胱切開をしたり、膀胱を縫合した後にお腹の中をしっかり洗浄したりすることで術後の感染を予防します。

私の場合、膀胱結石の手術時には必ず尿か、膀胱粘膜の培養検査を実施するようにしています。あらかじめ感染が分かっている場合には、術後も抗生剤の投与を行います。

尿腹

膀胱は風船のような臓器で、おしっこが溜まっていないときは縮んでおり、伸びることでおしっこを溜めることができます。

膀胱結石の手術では、サイズに程度はあれど、膀胱を切開します。切開して、結石を摘出したのちに膀胱を縫合します。私の場合、膀胱粘膜は連続縫合し、漿膜、筋層は単純結節縫合をしています。

膀胱粘膜は治癒するのが非常に早いことで知られていますが、傷が癒合するまでにおしっこが溜まり圧がかかると縫った隙間からおしっこがお腹の中に漏れ出てしまうことがあります。これを尿腹といいます。

基本的にしっかりと縫合ができていればまず漏れ出ることはありませんが、教科書等によると数パーセントの確率で尿腹は起きるようです。

私自身は経験ありませんが、この尿腹のリスクを減らすために術後数日間尿道カテーテルを設置し、膀胱に圧がかからないようにする先生もいます

しかし、尿道カテーテルを設置するとカテーテルからの感染リスクが上がること、犬が動くことでカテーテルが絡まってしまうことがあり、そちらのデメリットの方が大きいと私は考えているため、術後12時間ほどだけ留置して抜去してしまうようにしています。

そのため、当院では膀胱結石の手術はほぼ全症例で日帰り又は1泊2日で行っています

再発

先ほど述べたように犬の膀胱結石の手術は、膀胱結石の原因に対する治療ではなく、症状に対する治療です。そのため、膀胱結石を摘出したあとは再発を防ぐ必要があります。

膀胱炎が原因であれば、膀胱炎の治療を、感染が原因であれば、感染のコントロールをする必要があります。

膀胱結石の種類も非常に大事です。種類別の注意事項等はまた別の記事で解説したいと思います。

特にシュウ酸カルシウムという結石の場合、3年以内に50%が再発するともいわれており、術後の食事管理、尿の比重、pHをしっかりと管理することが重要です。

まとめと費用について

・膀胱結石の手術の難易度は性別、結石の数・大きさ等に影響を受ける

・膀胱結石の手術自体は比較的シンプルだが、取り残しは厳禁!!

・膀胱結石の手術の相場は15~30万円前後?

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