動物病院に2021年に勤務を開始してから、どのような理由で病院にきているかサーチをしたところ、目の異常で来院された患者さんは皮膚、消化器、泌尿器についで多かったです。
その中でも、特に結膜炎と角膜の傷がトップ2でした。そこで今回は、角膜潰瘍についてお話したいと思います。
角膜潰瘍は、初期対応が非常に重要な病気であり、治療が遅れると通常よりも治療に時間がかかり、費用もかさむ傾向にあります。
場合によっては、手術での治療が必要な症例もいますので、ご注意下さい!!
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犬の角膜の特殊性
角膜は目の表層に位置する透明なガラスレンズのような組織です。透明なので、血管は走行していません。
透明性を維持するために血管が走行していないと言った方が正しいでしょう。
そんな角膜ですが、視覚情報を絶えず入力するために非常に強い防御機構が備わっています。角膜の表層には多数の知覚神経が配列しています。
目にゴミが入ったときの違和感を思い出してください。ありえないほどの違和感と多量の涙が出てきますよね?
これは目を防御するための大事な防御機能なのです。
犬の角膜潰瘍の原因は?
犬の角膜潰瘍の原因には以下が考えられます。
・シャンプーなどによる角膜障害
・外傷
・ドライアイ
・感染
・角膜変性疾患
・逆さまつ毛など
臨床的に一次病院で遭遇することが多いのは、単純性の角膜潰瘍であり、その中でも比較的多い原因は「シャンプー等による角膜障害」、「外傷」です。
トリミング後に目をしょぼしょぼさせている場合には、角膜に傷がついている可能性が高いのでご注意下さい!!
角膜潰瘍をどのように診断している?
それでは、我々獣医師がどのように角膜潰瘍を診断しているか、そのプロセスを説明します。
・急に目をしょぼしょぼさせている
・白目が充血している
・目が痛そう
・涙が出ている
などが角膜潰瘍を疑う症状です。
上記のような症状がある場合にはすぐに動物病院を受診してくださいね!
見える範囲で、目に傷がついていないか、白目の状態、角膜の状態をチェックします。この時点で、角膜に傷がありそうと判断したら、客観的な検査に移ります。

角膜の最も外側は水をはじく性質があります。しかし、そのバリアが崩れてしまうと水と親和性のある染色液が角膜内に侵入し色が染まります。染まる部分が、角膜に傷ができている部分になります。

※角膜潰瘍には、単純性のものと複雑性のものがあり原因はさまざまです。
角膜潰瘍の治療の流れとポイント
角膜潰瘍の治療ですが、点眼治療が基本になります。
重要なポイントは、「角膜が修復しやすい環境を整えてあげること」です。角膜は非常に治癒力が高く、単純性の角膜潰瘍の場合、1週間で完治します。
これまで、単純性の角膜潰瘍と診断したケースで、1週間以上治療にかかったことはありません。
角膜潰瘍の時に処方されることが多い点眼薬、治療薬をご紹介します。
・ヒアルロン酸ナトリウム(角膜上皮の治癒を促進)
・抗生剤の点眼薬(細菌感染を防ぐ)
・抗コラゲナーゼ点眼薬(細菌や角膜が産生するタンパク分解酵素の働きを阻害する)
・痛み止めの内服
・抗コラゲナーゼ作用のある薬の内服
単純性の小さな角膜潰瘍の場合、上記の上2つの点眼薬だけで2,3日で完治します。
傷が広範囲の場合、深い場合には、点眼の種類や内服薬の追加をしています。
角膜潰瘍にかかる費用ですが、診察費、検査費、点眼薬等合わせて7,000円~が相場ではないでしょうか。
※複雑性の場合や傷が深い場合には手術による治療が必要になる場合もあります。
特に目が大きいチワワ、パグちゃんは角膜潰瘍のリスクがあるため、ご注意くださいね!
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まとめ
・角膜は透明性を維持するために、血管がない、知覚神経が多数分布しているなど特殊な組織
・角膜に傷がつくと犬は痛みで目をしょぼしょぼさせることが多い
・単純性の角膜潰瘍は、適切な治療を実施すれば1週間で完治する
犬が目をしょぼしょぼさせている、痛そうなどの症状がある場合には、すぐに動物病院で診てもらってくださいね!
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