犬の血液の病気はそれほど多くはないですが、血液の病気の中には命を脅かす危険性が高い病気があります。
血液の病気の中でも、今回は貧血を引き起こす怖い病気「免疫介在性溶血性貧血」について実際の症例をもとにお話ししたいと思います。
免疫介在性の病気に一度なると、ペット保険に加入できない場合や、加入できても補償対象外付きなど制約が付いてしまうことが多いです。
ペット保険に加入を考えている方は子犬の時期からご検討ください。

貧血とは?
貧血の定義と主な原因について書いておきます。
・出血などにより血を失う
➡自然孔(口、鼻、目、耳、肛門など)からの出血がないか、体内での出血がないか確認!
・血が体内で破壊されてしまう
➡今回のテーマの溶血性貧血の原因。主に免疫学的異常による。
・血が骨髄で造られなくなる
➡骨髄の異常や、慢性の炎症などが原因。
免疫介在性溶血性貧血と診断した流れ
急激な食欲の低下、元気消失、尿の色の異常で来院されました。身体検査で、口の粘膜が真っ白でした。また、院内でした尿の色が真っ黒でした。
この時点で免疫介在性溶血性貧血が鑑別診断の上位に上がってきます。
血液検査では、重度の貧血、軽度の黄疸、CRPという炎症マーカーの上昇が認められました。画像検査では、明らかな異常はなく、体内での出血も否定的でした。
尿は血色素尿という真っ黒な尿でした。血色素尿は、体内で多量の赤血球が破壊されることが原因ででます。

この病気は、自分の赤血球を見方が敵とみなして、攻撃して破壊してしまう病気です。攻撃してしまう原因は、免疫学的な機序が関与しています。
そのため、異常な免疫を抑えるために、免疫抑制剤を使用します。この時は、ステロイド剤を使用しました。
ステロイド剤の投与により、翌日から少しずつ回復し、1週間後にはすっかり元気になっていました。
※すべての症例が治療に反応するとは限りませんので、ご注意ください。
免疫介在性溶血性貧血は、ステロイドに良好な反応を示した場合には、良好な予後を示します。数か月かけて徐々にステロイドを減量し、完全休薬を目指します。
免疫介在性溶血性貧血は、除外診断の要素が大きいため、初回の費用が高額になることが多いです。全身的な血液検査、血液塗抹の評価、各種画像検査、尿検査等が必須のため、初診時に30,000円~前後が相場ではないでしょうか。
ステロイド抵抗性の溶血性貧血もあり、免疫抑制剤、輸血などの必要性がある場合には、さらに高額な費用がかかってきます。
免疫介在性の病気は生涯治療が必要になるケースも多いため、ペット保険の加入をおすすめします。

まとめ
・犬の口の粘膜の色が白っぽい、尿の色が真っ黒の場合、免疫介在性溶血性貧血の可能性がある
・日頃から、口の粘膜の色、尿の色を観察しておくと病気のサインを早期に発見できるかも
・免疫介在性溶血性貧血は突然発症し、命の危険性がある緊急疾患である。予防法もない。
・免疫介在性疾患の治療は長期にわたる可能性もあり、費用的に高額になることも。
貧血は命を脅かす可能性があります。粘膜の色が白い、舌の色が薄いなどの異常がある場合には、すぐに動物病院へご相談くださいね!
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