治らない犬のくしゃみ・鼻水は歯周病が原因かも?【犬の口腔鼻腔瘻】

東大宮にある駅前通り動物病院では、犬のくしゃみや鼻水の治療を行っています。くしゃみや鼻水は一見、上部気道、特に鼻の中の病気と思われるかもしれませんが、犬の場合、歯周病が原因でくしゃみや鼻水が出ることがよくあります。

特に歯周病が原因でくしゃみ・鼻水が出ている場合、歯周病の治療を行わないとくしゃみ・鼻水は完治しません

そこで今回は、犬のくしゃみ・鼻水と歯の関連性について犬の模型・実際の写真を使って説明します。

目次

犬の口と鼻の関連性

犬の口と鼻は正常であれば、口腔内ではつながっていません。つまり、犬が水を飲んだり、食べ物を食べたりしても鼻に入ってしまうことはありません。

まれに、迷入してしまうこともありますが、日常的に起こることではありません。迷い込んでしまう場合は、のどの奥から鼻の中に異物が入ってしまうことが多いです。

特に、吐きやすい子の場合、吐物が鼻の中に一部入り込むことでくしゃみや鼻水、逆くしゃみなどの症状が出ることもあります。

犬の上顎の歯と鼻の中は、薄い1枚の骨で分かれています。通常であれば、骨で隔てられているので、食べ物や水が鼻の中に入ることはないのですが、歯周病が悪化すると、この薄い骨が溶かされてしまいます。

この骨が破壊されてしまうと歯周ポケットと鼻の中が交通してしまいます。このように口の中と鼻が交通してしまうことを口腔鼻腔瘻と呼びます。水を飲んだ際などに鼻の中に入ってくしゃみが出たり、口の中の細菌が鼻の中に侵入することで鼻炎を起こします。

赤色の矢印が歯と鼻を隔てている骨。水色で囲った部分が鼻の中。

犬のくしゃみ・鼻水の原因として歯周病を疑うポイントは?

一般的には、くしゃみ・鼻水は上気道症状です。そのため、鼻炎などが原因のことが多いです。

しかし、最初に説明したように、くしゃみ・鼻水の原因が歯周病による場合もありますので、そのポイントを整理したいと思います。

・犬の年齢が7,8歳以上の場合

歯石・口臭が気になる

・歯ぐきから出血することがある

水を飲んだ後に、くしゃみ・鼻水が出ることが多い

・口を触られるのを嫌がるようになる

くしゃみ・鼻水で抗生剤を内服すると改善するが、中止すると再発する

上記の症状に当てはまるようであれば、くしゃみ・鼻水は歯周病が原因で生じている可能性が高いです。

歯周病が原因のくしゃみ・鼻水(口腔鼻腔瘻)の診断は?

確定診断をするには、歯科用レントゲンを撮影する必要があります。その他には、歯周ポケットから水を注入して鼻から出てくるか確認する方法もあります。

しかし、いずれの方法も全身麻酔が必要になります。

一見するときれいな上顎の犬歯
犬歯の内側の歯周ポケットから鼻に貫通している

この子の場合、見た目では判断つきませんでしたが、歯ぐきから出血するという症状もあったため、全身麻酔下で歯科用レントゲンを撮影したところ、犬歯の内側のポケットが深く、鼻の中と交通していました。

そのため、犬歯を抜歯し、開いている孔を歯肉粘膜で閉鎖しました(歯肉フラップと言います)。

歯石が多量に付着している場合や、歯肉後退があるなど見た目から怪しいと判断できる場合も多いですが、この症例のように見た目ではわからないこともあります

見た目で分からない場合には、診断のために全身麻酔下で確認する必要性があります。

犬の頭部模型。赤丸で囲った部分が口鼻腔漏の部位。
犬歯の内側歯周ポケット(歯周病モデル)

歯周病が原因のくしゃみ・鼻水(口腔鼻腔瘻)の治療方法は?

歯周病が原因でくしゃみ・鼻水が出ている場合には、外科的な治療が必要です。外科的な治療をしないと永続的にくしゃみ、鼻水の症状が出てしまいます

穴が開いていることがくしゃみ・鼻水の原因のため、穴をふさぐ治療が必要です。

犬歯以外の歯で、口と鼻が交通していない場合には、縫合しなくても勝手にふさがります。しかし、口と鼻が交通してしまっている場合は、穴をしっかり縫って閉じない限り、穴はふさがりません。

犬歯を抜歯後、歯肉を縫合して穴を閉鎖したところ

特に犬歯の抜歯後には、大きな穴が開くため、歯肉で穴を閉じることは手技的に難易度が高いです。

そのため、丁寧に穴を閉鎖しないと穴が完全にふさがらずに治療の目的を達成することができません。治療直後はしっかりと穴が閉じていても治療過程で歯肉は傷から遠ざかる方に力がかかります。

そのため、縫合部位が裂けて再度穴が開いてしまう可能性もあります。そのため、口と鼻が交通している場合の歯科治療は処置を実施してから、2週間後くらいまでは観察が必要になります。

当院では、歯科処置後2週間で一度歯肉の状態を確認し、その1か月後に再度状態を確認するようにしています。

当院では、2022年より、高性能デンタルユニットの導入、デジタル歯科用レントゲン、高性能歯科用ルーペ(3倍)を導入しており、犬の口腔鼻腔瘻の豊富な治療経験がありますので、ぜひご相談下さい。

歯周病が原因のくしゃみ・鼻水(口腔鼻腔瘻)の治療費は?

口腔鼻腔瘻は、抗生剤の投与により一時的に症状が緩和することもありますが、完治は望めません。そのため、外科的に原因歯の抜歯を行い、抜歯窩(瘻管)を確実に閉鎖することが根治的治療になります。

多くの場合、口腔鼻腔瘻がある子ではその他にも歯周病に罹患している歯があるため、その他の歯もスケーリングや抜歯などの対応をする必要があります。

・麻酔前検査代(胸部レントゲンや血液検査等):10,000円~

・全身麻酔代(麻酔時間や使用する薬剤で変動):10,000円~

・歯科用レントゲン撮影代:3,000円~

・抜歯及び歯肉縫合代:50,000円~

・術後の抗生剤や鎮痛剤などの内服代:1,000円~

総額で80,000~150,000円前後になります。

スケーリングと1本の犬歯の抜歯、抜歯窩の閉鎖であれば8万前後、複数歯の抜歯、抜歯窩の閉鎖が必要な場合には15万前後です。

また全身麻酔に関して、不安がある方はぜひ一度下の記事を読んでみて下さい!

まとめ

中年齢以上の犬の鼻水・くしゃみの原因は歯周病の可能性もある

・抗生剤等で一時的に改善するも、再発する場合には歯周病の可能性もある

・犬歯の内側の歯周ポケットが深くなることで口と鼻の中がつながってしまう

歯周病が原因のくしゃみ・鼻水は外科的な対応が必要

そのため、慢性のくしゃみ・鼻水に困っている方はぜひ一度動物病院に相談してみてください。

 

駅前通り動物病院での歯周病治療の特徴

丁寧でわかりやすい治療説明

犬の歯周病治療には全身麻酔が必要であり、気軽に実施できるものではありません。

そのため、治療前に現状考えられる治療内容、治療経過等をじっくりと話したうえで治療に移ります。

これまでの治療経験等も画像や歯の模型等を使ってわかりやすく説明します。

歯科専用器具を完備

高性能超音波スケーリング、歯科用高速ドリル、歯科用レントゲン、歯科用サージカルルーペ等の最先端、最新の歯科専用器具を取り揃えています。

高倍率ルーペ、歯科用レントゲンを導入している動物病院はまだほとんどありません。

質の高い治療

駅前通り動物病院で犬の歯科治療を2021年に開始してから100頭以上の歯周病治療を行ってきました。

また、常に犬にとってより負担の少ないかつ効果的な治療方法を追求し続けています。

ご家族が納得できる、満足できる治療を提供し続けています。

可能な限り、生涯での麻酔回数を減らせるような治療方法をご提案しています。

治療後のデンタルケアサポート

歯のメンテナンスの仕方を必ずサポートします。

いきなり歯磨きを指導するのではなく、まずは顔周りのマッサージから。

徐々にステップアップできるようにアドバイスしています。

一方通行にならないように必ずご家族との対話を大事にしています。

駅前通り動物病院での歯周病治療の流れ

STEP1 診察(口の中、全身チェック)

歯周病治療では、まずは視診を行い、大まかな口の中の状態を確認します。歯の本数や、生え方、動揺の有無、歯石の付着具合、歯肉の炎症の程度、歯肉ラインなどを確認します。

また、あわせて全身の状態の確認も行います。口の中以外の異常がないかを確認します。

この時点で、大まかな治療の内容、治療後のフォローアップ、費用等のお話を丁寧に説明します。

STEP2 麻酔前検査(当日実施)

全身麻酔をかける前の評価を実施しています。これは当日に実施することが多いです。主に、血液検査、胸部レントゲン検査、エコー検査で心臓や肝臓、腎臓等の主要な臓器機能を評価します。

麻酔前検査で明らかな異常が認められなかった場合は、全身麻酔下での歯科処置を実施します。

STEP3 スケーリング&歯科レントゲン検査

全身麻酔をかけたら、まずは口の中を観察します。その際に、歯周ポケットの深さや、歯の動揺の有無を確認します。その後、スケーリングを行い、歯に付着している歯石を除去します。歯石を除去し終わったら、必要に応じて、歯科用レントゲンを撮影します。

歯科用レントゲンは、歯の評価、歯を支えている歯槽骨の評価のために行います。

STEP4 必要に応じて抜歯等の処置

抜歯適応の歯がある場合には、抜歯を行います。抜歯には、歯肉切開をせずに抜く閉鎖法と歯肉切開を行い抜歯を行う開放法の2つがあります。

歯肉切開をせずに済む場合にはあえて歯肉切開は行っていません。どちの方法をとるかは、歯の状態にもよります。

開放法で抜歯をした場合には、歯肉縫合をします。吸収糸で縫合するため、抜糸の必要はありません。

歯科処置後の管理

歯科処置は、基本的には日帰りになります。麻酔後は鎮痛をしっかり行い、帰宅当日の夜からお水とご飯は食べられる状態でお返しするようにしています。

抜歯本数が多い場合や、全身状態に異常がある場合には1泊2日で実施しています。

処置の内容に応じて、今後のご自宅での歯のケアについてアドバイスをさせて頂きます。

歯周病治療の費用の目安

・麻酔前検査:10,000円~
➡血液検査、胸部レントゲン検査(必要に応じて心臓エコー検査、腹部エコー検査)

・全身麻酔代:10,000円~
➡静脈確保、点滴、抗生剤、鎮痛剤等

・スケーリング代:25,000円~
➡歯石除去、ポリッシング等

・抜歯代:10,000円~
➡本数、部位、歯肉縫合の有無により変動

例)軽度歯肉炎のみの場合(スケーリング、ポリッシングのみ)
➡50,000円前後~

例)中等度歯周病の場合(スケーリング、歯科用レントゲン、軽度の抜歯)
➡70,000円~

例)重度歯周病の場合(スケーリング、歯科用レントゲン、抜歯多数、歯肉縫合)
➡100,000円~150,000円

東大宮、大宮、土呂、上尾エリアで歯科処置を検討されている方、ぜひ当院へご相談くださいませ。

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