犬にも前立腺はあります。前立腺はお腹の中にあり、膀胱の出口付近の尿道に巻き付くように存在しています。
そんな前立腺ですが、去勢済みの男の子の場合、ほとんど問題になることはありませんので、ご安心ください。
逆に、未去勢の男の子の場合は、ぜひ一読お願いします。
ひとつポイントとして、予防的な去勢手術は保険適応外になりますが、前立腺疾患の治療としての去勢手術は保険適応になります。

前立腺の病気は?
犬の前立腺の病気で多いのは
・前立腺肥大(前立腺が大きくなる)
・前立腺炎(前立腺に感染を起こす)
上記の2つの病気が多いと思いますので、ご紹介します。
犬の前立腺肥大の症状は?
犬の前立腺肥大は、精巣ホルモンの影響で、前立腺が徐々に大きくなる病気です。
犬の前立腺肥大ですが、私がよく出会う症状は「便が細くなった」です。人間の場合、前立腺肥大により尿道が圧迫されることで尿の切れが悪くなるなどの症状が出るみたいですが、犬の場合は少なく感じます。
なぜ便が細くなるかですが、前立腺の背中側に直腸が走行しているので、前立腺肥大になると狭いところを便が通るので細くなります。
犬の前立腺肥大の診断と治療法は?
前立腺が何センチ以上で前立腺肥大という基準はありませんが、相対的な基準はあります。また、直腸検査で前立腺を触知する方法もあります。

・抗ホルモン剤の投与
➡1週間ほど抗ホルモン剤を内服することで前立腺のサイズが縮小します。1週間内服しきった頃には前立腺の面積は70%くらい低下します。
そのため、内服して数日で症状の改善が認められます。
※投与から半年たつと元のサイズに戻ってしまいます。
・去勢手術の実施
➡根本的な問題は、精巣から放出されるホルモンのため、去勢手術を行うことで根治が見込めます。
犬の前立腺炎の症状は?
犬の前立腺炎は、前立腺に細菌が感染することで発症します。
経験的にですが、「嘔吐を伴う血尿」が前立腺炎の症状としては多いと思います。前立腺炎は、細菌感染の中でも症状が重くなる傾向にあります。
そのため、全身的な症状を伴うことが多く「発熱、食欲低下、元気消失、嘔吐」などが挙げられます。
犬の前立腺炎の診断と治療法は?
・尿検査で細菌や白血球の検出
・エコー検査で前立腺の大きさ、内部構造を確認
※前立腺膿瘍の場合には、排膿が必要であり、手術を行うこともあります。
・血液検査では、炎症の有無を確認

前立腺炎の原因は細菌感染が多いです。そのため、1~2週間の抗生剤の投与を行います。また、痛みを伴うことが多いため、痛み止めの処方もします。
私が診断した前立腺炎の子の過半数は、「血尿、元気なし、頻回の嘔吐」などの症状がありました。嘔吐があるとつい吐き気止めなどが必要なのではないかと思われがちですが、原因は細菌感染による炎症のため、抗生剤の投与と痛み止めの処方ですぐに改善してくれました。
犬の前立腺の病気に対する去勢手術の費用は?
予防的な去勢手術とは異なり、治療目的の去勢手術の場合、年齢が上がっていること、感染を起こしている場合があること等の理由により、予防的な去勢手術よりも費用は上乗せされることが多いです。
状態等にもよりますが、当院では通常の去勢手術よりも2~3万円多くかかることが多いです。
しかし、病気の治療目的のため、保険適用になると思われます。

まとめ
・未去勢の男の子は、前立腺の病気(前立腺肥大、前立腺炎など)に注意!!
・便が細い、途切れるなどの症状がある場合には、前立腺肥大かも
・血尿、食欲低下、元気消失などの症状がある場合には前立腺炎かも
・前立腺炎は細菌感染が原因のことが多く、重症化しやすいため注意!
うちの子まだ去勢してないけど、前立腺は大丈夫かな?などの不安がある方は、ぜひ動物病院に相談をしてくださいね!
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