動物病院では、「夜泣き」で悩む患者さんとそのご家族をサポートするために、様々な方法でアプローチしています。
夜泣きは、ご家族の睡眠不足の原因にもなりますし、近所迷惑が心配でストレスを抱えてしまう方も大勢います。私自身はまだ「夜泣き」を経験したことはありませんが、神経質?な性格もあってすごく共感できます。
そんなわけで、今回は老犬の認知機能不全症候群の症状としての「夜泣き」への対処法について解説したいと思います。
認知症かな?と思ったら、まずは下の記事のチェックリストに症状が当てはまるか確認してみて下さい!!

犬の認知症と夜泣き
犬の認知症「認知機能不全症候群」とは、その名前の通り認知機能が低下することで様々な症状が出ます。主な原因は、進行性の脳の変性による脳機能の低下です。
認知症による脳の機能低下は徐々に悪化していき、改善させることは困難と言われています。
認知症により、睡眠リズムが乱れることで睡眠障害が出ます。具体的には、昼夜逆転、夜泣き、寝付くのに時間がかかるなどです。
これらの症状は、ご家族の生活へのストレスにも大きく関わっているため、我々獣医師としても可能な限り早く対処したい問題でもあります。

犬の夜泣きに対する対応は?
薬物療法
犬の認知機能不全症候群に対する根本的治療薬は存在しません。しかし、人用の認知症薬で犬にも使用されているものもあります。
特に、ドネペジル塩酸塩という薬は犬でも報告があり、当院でも使用経験があります。認知機能不全症候群の症状の中でも「夜泣き」などに対して一定の効果があると言われています。
また、認知症そのものに対してではなく、いわゆる睡眠導入剤等の薬を処方することもあります。これらの薬は比較的即効性があり、夜泣きを落ち着かせることが可能です。
しかし、使い方を間違えると副作用で命の危険もありますので、必ず獣医師の指示にしたがって下さい。
サプリメント
犬の認知機能不全症候群に対して、論文レベルで効果があると報告されているサプリメントはありませんが、病院で紹介しているサプリメントもあります。
犬用アンチノールは、抗酸化作用があり1日2回2週間内服することで少し症状が落ち着く場合があります。
そのため、少しでも認知症かな?と思ったらまずは2週間だけでも試してみてください!!
サプリメント単独ではなく、その他の薬や栄養療法、行動療法と組み合わせることで長期的な効果が期待できます。

生活改善
犬の認知症による夜泣き・昼夜逆転等に対して、ご家族ができることもあります。
・午前中に日光に当てるようにする
・日中になるべくお外への散歩や手足のマッサージ等をする
・夜寝るときは同じ時間に電気を消すなど規則正しい生活を心がける
説明するだけなら簡単ですが、実際に上記のことをやろうとすると大変です。まずは少しづつ試してみてください。
まとめ
・犬の認知症による夜泣きは家族にとっても、睡眠不足や近所迷惑への配慮等ストレスがかかる症状である
・犬の夜泣きを止めるための薬物療法は、副作用にも注意する必要があり、必ず獣医師の指示通りに
・犬の認知症による夜泣きを少しでも緩和する方法として、アンチノールの投与、生活改善、栄養療法がある
夜泣きで困っている方、犬の認知症は治療介入が早いほど進行を遅らせることができます。少しでも気になる場合には、早めに環境改善やサプリメントの開始、または動物病院に相談してみてくださいね!!

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