【獣医師が執筆】犬の糖尿病の症状・治療と余命について

東大宮にある駅前通り動物病院では、犬の糖尿病の診断・治療を行っています。

犬の糖尿病は、インスリンの不足・欠乏により血中のグルコース(血糖値)が高くなることで様々な代謝異常を引き起こす病態です。

犬の糖尿病はインスリン分泌が枯渇してしまうことがほとんどで、インスリン投与が必須になります。

糖尿病単体の場合もありますし、クッシング症候群、膵炎、腎不全などが併発している場合もありますが、今回はシンプルに犬の糖尿病の症状や余命・寿命について解説していきたいと思います。

目次

犬の糖尿病の症状は?

ご家族の方に知っておいて欲しい症状は以下の3つです。

・多飲(水をたくさん飲む:目安は1日に体重1kgあたり100ml以上)

・多尿(おしっこの量、回数が増える)

・体重が減る(同じ量を食べているにもかかわらず)

一番初めに出る症状は、多飲・多尿です。体重の減少はある程度時間が経過しないとわからないことが多いです。

どのくらいの期間を経て発症するのかはわかっていませんが、当院で糖尿病と診断した症例の中には、4月のフィラリア検査の際には異常が認められなかったが、7月頃に多飲多尿で来院されて糖尿病と診断した経験がありますので、突発的に起こる可能性があります。

犬の糖尿病は初期の場合、多飲多尿のみで元気や食欲も問題ないことが多いですが、時間経過とともに脱水・食欲低下・元気消失などの症状が現れ、最悪の場合死に至ることもあります。

そのため、多飲多尿には注意しましょう!!以下に実際のポイントを載せておきます。

多飲に関わるポイント

・お水の器が空になることが増えた
・お水を交換する頻度が増えた
・よくお水を飲んでいることが多い気がするなど
➡1日に飲むお水の量を測定してみましょう!(夏場や運動後など一時的に増えることもあります)


多尿に関わるポイント

・おしっこをする回数が増えた
・ペットシーツの交換回数が増えた
・ペットシーツのおしっこの量が増えた
・おしっこの量が薄い気がするなど
➡お水飲む量が増えていないか確認してみましょう!

 

犬の糖尿病の治療は?

犬の糖尿病の原因としては、以下のようなものがありますが、膵島萎縮(原因不明)が一番多いと思います。

・膵島萎縮(原因不明)

・クッシング症候群(犬の副腎皮質機能亢進症)

・黄体期糖尿病(未避妊の犬)

・膵炎

・医原性(ステロイドの長期投与など)

犬の糖尿病はインスリンが枯渇して発症することが多いため、治療はインスリンの投与が必須になります。(一部インスリン抵抗性による糖尿病もあります)

犬の糖尿病治療の基本は1日2回のインスリン注射です。

ちなみに糖尿病を治療せずに放置すると間違いなく死に至るため、様子を見たりせずに怪しいなと思ったらすぐに動物病院を受診して下さいね!!

当院での犬の糖尿病治療の流れを簡単に説明します。

STEP
糖尿病の診断

血液検査での高血糖の存在、尿検査で尿糖の出現を確認し、糖尿病と診断。また、併発疾患の有無を血液検査、尿検査、腹部エコー検査等で確認。

STEP
血糖曲線の作成

食欲・元気に問題ない場合には通院での治療になります。投薬するインスリンの量を決めるため、血糖曲線を作成します。

当院では、人で用いられているリブレと呼ばれる簡易血糖測定器を犬の脇腹に装着し、採血をすることなく血糖値をご自宅で測定して頂き、インスリンの投与量を決定しています。

経験的には、平均して1週間以内にインスリンの投与量が決まることが多いです。

※状態が悪い場合には、入院が必要な場合もあります。

STEP
定期的な通院

併発疾患がなく、インスリンの投与量が決定したら、状態に応じて、1~3カ月毎の通院になります。コントロールがいまいちの場合には、再度リブレを装着して投与量を調節することもあります。

犬の糖尿病の余命・寿命は?

犬の糖尿病は、インスリンの投与を行い、安定した血糖コントロールが得られれば、予後はよいとされています。つまり、他の健康な子と比較して寿命が縮んだりすることもありません。

しかし、クッシング症候群が併発していたり、膵炎、腎不全などがある場合には血糖値のコントロールが不安的になり併発疾患によって亡くなってしまうこともあります。

個人的な経験としては、併発疾患のない糖尿病の場合、他の健康な犬と変わりないと思います。

犬の糖尿病は多種多様であり、一概には言えませんが、海外の1つの報告を載せておきます。(参考程度に)

The median survival time was 964 days (range 22-3140)

生存期間中央値は964日だった。(22日ー3140日)

Survival estimates and outcome predictors in dogs with newly diagnosed diabetes mellitus treated in a veterinary teaching hospitalより一部引用

そのため、犬の糖尿病で大切なことは以下の通りです。

・早期に発見し、早期に治療介入をすること

・併発疾患がないか全身的な検査をすること

・定期的に通院し、血糖値が安定しているか、その他の異常がないかを確認すること

これらのことが重要になります。

糖尿病になりやすい犬は?

犬の糖尿病は中高齢での発症が多く、5~12歳で診断されることが多いと言われています。

まれに若齢発症(6か月齢以下)もあると言われています。当院で糖尿病と診断した犬で最も若かったのは3歳です。

日本での好発犬種を調べた報告はなかったと思いますが、トイプードルでの発症は経験的にも多いと思います。トイプードル自体が日本では多いので、もちろんなんとも言えませんが。

ちなみに犬の糖尿病は膵島萎縮(原因不明)が多いため、糖尿病になるのを予防するのは難しいと思います。

また、よく「肥満は関係ありますか?」と聞かれることがありますが、犬の肥満は糖尿病の大きな原因にはなりません。肥満気味の犬が糖尿病になった場合には、その他の病気の影響か、遺伝素因によるものと考えられます。

犬の糖尿病におすすめの食事(ドッグフード)は?

犬では、インスリン抵抗性のために高血糖になるのではなく、インスリンが枯渇して高血糖になり、糖尿病を発症することが多いため、一番の治療はインスリンの投与になります。

そのため、犬の糖尿病では絶対に糖尿病食にしないといけないわけではありません。大事なことは毎日同じ量の食事(フード)を食べることで同じ量のインスリンを投与し、安定した血糖管理ができることです。

そのため、生涯食べ続けることができる総合栄養食をみつけることが重要です。

併発疾患がある場合には、そちらを優先するべきです。皮膚のアレルギーがある場合には、アレルギー食を優先し、膵炎がある場合には低脂肪食を優先するなど。肥満であれば、糖尿病食の方が減量はしやすいと言われています。

参考までに糖尿病食の組成について載せておきます。

・高タンパク➡タンパク不足で筋肉が減るとブドウ糖の消費が減り血糖値が上がる

・低~中炭水化物➡適度に制限することで血糖値の上昇を抑える

・低~中程度の脂肪➡過度な脂肪は肥満につながり、インスリン抵抗性が増す

・中~高繊維食➡食後高血糖が緩やかになる

まとめ

・犬の糖尿病はインスリンが枯渇して発症するため、インスリンの注射が必要

・犬が多飲多尿を示している場合には糖尿病の可能性も!

・犬の糖尿病では食事療法は絶対的なものではない

・犬の糖尿病は併発疾患がなく、血糖コントロールが安定していれば寿命に影響しない

 

駅前通り動物病院では医療機器を完備

血液検査機器

各種血液検査機器を完備しているため、院内で血液検査を実施できます。15分前後で結果がでるため、スムーズに治療に移ることができます。

デジタルレントゲン検査機器

デジタルレントゲンシステムを導入しているため、撮影からデータの描出まで、数分で終わるため、スムーズに治療に移行することができます。

歯科用デジタルレントゲン装置

2022年の秋に新たに歯科用デジタルレントゲンを導入しました。増加する歯周病の治療成績をより向上させるために、また客観的な情報を提供するために役立ちます。

高性能サージカルルーペ

歯周病治療などの際に、徹底的な歯周ポケットの洗浄、歯石除去やより質の高い治療を実現するために2022年10月に導入。

超音波検査機器

超音波検査により、お腹の中の臓器を評価したり、心臓の構造・機能を評価したりすることができます。プローブを当てるだけなので、痛みもなく動物たちのストレスを最小限に検査ができます。

内視鏡装置

犬の場合、内視鏡は全身麻酔をかける必要があります。しかし、お腹を開けることなく、食道、胃の中、十二指腸などを観察することが可能です。また、鼻の中や、喉の奥も観察することが可能です。

歯科用ユニット

3歳以上の犬の70-80%が歯周病と言われています。そのような背景の中、当院では歯周病の治療に力を入れています。より短時間で歯周病治療を実施できるように歯科用ユニットを導入しています。

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