2021年に勤務を始めてから、これまでに異物による腸閉塞と診断した犬と猫は7頭いました。
このうち2頭は胃から続く十二指腸に詰まっていたため、内視鏡で摘出しています。残りの5頭は小腸内で腸閉塞を起こしていたため、手術にて異物の摘出を行っています。
というわけで、今回は犬の腸閉塞について異物を内視鏡で摘出した子についてお話をしたいと思います。
次回に手術で腸閉塞を治療した子の流れを書いていこうと思います。
異物による腸閉塞とは?症状は?
口から食べたものは、食道を通って胃の中に入り、小腸に運ばれ大腸で便になり、肛門から出ていきます。この流れは一方通行ですが、異物等の摂食により消化管詰まってしまい流れが阻害されることを消化管閉塞といいます。
食道で閉塞すれば、食道閉塞、胃の出口で閉塞すれば、幽門閉塞、小腸内で閉塞すれば腸閉塞と呼びます。
ちなみに食道閉塞も、幽門閉塞も、小腸閉塞もすべて出会ったことはあります。
消化管閉塞を起こすと、食べ物や水、胃液などの液体がより遠位に送ることができなくなりますので、逆流が起きます。この逆流が「嘔吐」や「吐出」のような症状として出ます。
腸閉塞の症状で一番多いのは、「何を食べても、水を飲んでも吐いてしまう」という症状です。腸閉塞を起こすと閉塞後1~2時間くらいで急激に症状が出ることも特徴です。
詰まる原因のものを食べるまではいつも通りに元気にしていることがほとんどです。
内視鏡か手術か。境界線は?
腸閉塞は解除しないと命に関わる状態です。閉塞を解除する方法は2通りあります。
・内視鏡で摘出➡異物が食道、胃の中、十二指腸の胃の出口付近にある場合は適応。
・手術で摘出➡内視鏡がない場合。異物が小腸にある場合、内視鏡で摘出できない場合に適応。
我々獣医師としても、内視鏡で摘出できればハッピーです。しかし、小腸内で閉塞していた場合には、手術が必要です。
異物がどこで閉塞しているかは、腹部レントゲン、エコー検査でほぼ診断することができます。
手術で異物を摘出したときの流れと費用などはコチラを参考に↓↓
胃の出口に異物が詰まった時の治療の流れと費用について
数週間前にプラスチックの一部を誤食したかもしれないとのことでした。しかし、それ以降症状もなく、元気食欲も問題ありませんでした。
そのような背景の中で、突然何を食べても、水を飲んでも吐いているとのことで来院されました。
腹部レントゲンにて、胃の中に異物を確認。腹部エコー検査では、胃内に液体貯留あり。十二指腸以降は問題なし。
以上の検査結果より、胃の出口付近で異物が詰まっている可能性が高いと判断、内視鏡による摘出をご提案しました。
※幽門閉塞では内視鏡で摘出できない可能性もあり、その場合は手術になる可能性もあります。
内視鏡を胃の中まで、いれてさらに胃の出口を観察すると幽門に異物らしきものが詰まっていました。
この異物が幽門に詰まっているせいで、胃の中のものが先に通過できずに嘔吐をしていると判断し、鉗子と呼ばれるものをつかむものでその異物を幽門から引き抜き、食道を通って口から外に摘出しました。
異物癖がある子は、胃の中に別のものが入っている可能性もあります。そのため、最後にもう一度胃の中をよく観察して処置を終了するようにしています。
また、異物が詰まっていた子では、頻回の嘔吐により胃が荒れている場合が多いので、胃の粘膜を保護するようなお薬を塗布します。
異物の内容にもよりますが、大体20分程度で胃の中の観察と異物の摘出が完了することが多いです。詰まってからすぐに閉塞を解除できた場合には、異物摘出後翌日くらいからいつも通りの生活に戻れることが多いです。
症状がでてから、時間が経過してしまうと、胃の粘膜のダメージが大きく、回復まで数日かかる場合もあります。
ちなみに内視鏡で異物を摘出した場合の費用ですが、当院では麻酔前の検査、内視鏡処置含めて、50,000円~ぐらいが相場です。
※本人の一般状態や異物の内容によって変動します。
まとめ
・犬が突然、何を食べても、水を飲んでも吐いている場合には要注意!!消化管閉塞かも??
・消化管閉塞は解除しないと命に関わる
・閉塞解除の仕方は、内視鏡で摘出、手術で摘出するの2パターン
・内視鏡で異物が摘出でき、閉塞が解除できれば比較的すぐに体調は回復する
異物に心あたりがある場合、犬が突然吐きまくっている場合には腸閉塞の可能性も。異物で不安な方はぜひ動物病院に相談してくださいね!
駅前通り動物病院では医療機器を完備
血液検査機器
各種血液検査機器を完備しているため、院内で血液検査を実施できます。15分前後で結果がでるため、スムーズに治療に移ることができます。
デジタルレントゲン検査機器
デジタルレントゲンシステムを導入しているため、撮影からデータの描出まで、数分で終わるため、スムーズに治療に移行することができます。
歯科用デジタルレントゲン装置
2022年の秋に新たに歯科用デジタルレントゲンを導入しました。増加する歯周病の治療成績をより向上させるために、また客観的な情報を提供するために役立ちます。
高性能サージカルルーペ
歯周病治療などの際に、徹底的な歯周ポケットの洗浄、歯石除去やより質の高い治療を実現するために2022年10月に導入。
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超音波検査により、お腹の中の臓器を評価したり、心臓の構造・機能を評価したりすることができます。プローブを当てるだけなので、痛みもなく動物たちのストレスを最小限に検査ができます。
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犬の場合、内視鏡は全身麻酔をかける必要があります。しかし、お腹を開けることなく、食道、胃の中、十二指腸などを観察することが可能です。また、鼻の中や、喉の奥も観察することが可能です。
歯科用ユニット
3歳以上の犬の70-80%が歯周病と言われています。そのような背景の中、当院では歯周病の治療に力を入れています。より短時間で歯周病治療を実施できるように歯科用ユニットを導入しています。
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