【獣医師が執筆】犬が震える理由は?

東大宮にある駅前通り動物病院では、地域の1次動物病院として、日々診療を行っています。

そこで今回は、比較的遭遇することが多い「犬が震える」症状について解説します。実はこの症状、獣医師にとっても診断が難しい症状なのです。

理由としては、犬が震える原因はあまりにも多いからです。そこで今回は、当院で実際に震える症状で来院した犬の震えの原因として多いものを中心に解説します。

目次

犬が震える~動物病院に連れて行った方がいいの?~

犬が震えている場合、すぐに動物病院に連れて行った方がいいのでしょうか?

これは非常に難しい質問だと思います。食欲がないとか、元気が明らかにない場合には迷わず動物病院に連れて行く方が多いと思います。

しかし、食欲もあるし、元気もそれなりにありそうなのに震えている場合はどうでしょうか。

獣医師という立場上、犬の行動すべてに意味がある、原因があると考えてしまうことがあります。しかし、実際のところは特に意味がないことや原因不明の行動をとることは多々あります。

あの行動は前兆だったのかと、思うこともありますし、あれはいったい何だったのかと不思議に思うこともあります。

犬の場合、自分で病院に行くことはできませんので、ご家族の判断にゆだねられます。仮に様子をみるにしても時間的な制限をつけることをおすすめします。

一番のおすすめはかかりつけの先生に電話で質問してみることです。いつも診てくれている先生ならなにかアドバイスをくれるはずです。

犬が震える~怖いから、寒いから~

一番最初の原因として、ご自宅でもある程度判断ができる原因は「怖さによるもの、寒さによるもの」です。

人と同じように犬にも恐怖の感情があります。何に対して恐怖を感じるかはそれぞれです。主な恐怖の対象としては、「特定の人、犬やその他の動物」、「雷や風などの大きな音、チャイム音など」が多いです。

特に雷は恐怖、不安によりパニックになる子もいます。

犬も人と同じように恒温動物です。恒温動物というのは、外気温にかかわらず、体温を常に一定に保っている動物のことです。人と同じように犬も寒さを感じます。毛に覆われているから大丈夫と思われるかもしれませんが、犬の至適温度は人と同じくらいです。

そのため、冬に外に散歩に行く際や、寒い部屋の中にいると体温を上昇させるために震えることがあります。

恐怖による震えの場合➡恐怖の対象を取り除いてあげる

寒さによる震えの場合➡洋服を着せてあげる、部屋を暖める

知っておいてほしい豆知識をご紹介しておきます。

犬は寒さよりも暑さに弱い!!
多くの動物と同じように、犬は寒さよりも暑さに弱いです。

犬が震える~内臓痛の場合~

犬が震える病的な理由として比較的遭遇することが多いのは内臓痛によるものです。

特に犬の場合は急性腸炎や急性胆嚢炎、急性膵炎などで痛みがでることが多いですが、このような病気になると痛みで震えることが多いです。

犬の消化器の病気の場合は、嘔吐や下痢、お腹がキュルキュルなるなどの症状がメインのことが多いですが、急性膵炎では嘔吐が出ない子もいます

内臓痛かどうかを調べるには身体検査の他に血液検査や画像検査(レントゲンやエコー検査)を実施することが多いです。

私の場合、嘔吐を伴う震えの場合には、血液検査で炎症の数値や肝酵素の数値を確認するとともに、腹部エコー検査で胆嚢、胃、小腸、膵臓を中心に検査することが多いです。

急性の腸炎や胆嚢炎、膵炎は自分の免疫だけでは打ち勝てずに亡くなってしまうこともある病気のため、嘔吐を伴う震えがある場合には、すぐに病院に連れて行くようにして下さいね!

犬が震える~首、腰のヘルニアの場合~

首、腰の軽度のヘルニアで多い症状は、「犬が震えており、あまり動きたがらない」です。首や腰の軽度のヘルニアでは、内臓機能には異常が出ないことが多いので、食欲はある子が多いです。

内臓痛による震えとの違いは、嘔吐や下痢などの消化器症状は出にくいことです。

首や腰の軽度のヘルニアの診断方法ですが、首や腰の触診、神経学的検査を実施することが多いです。首や腰を圧迫した際に痛がる素振りや回避する行動がみられることがあります。

強く圧迫しすぎると症状が悪化することがあるので、必ず獣医師による触診を受けるようにして下さい

首や腰のヘルニアの確定診断はMRI等が必要ですが、神経学的に異常がない場合には、診断的治療として消炎鎮痛剤や神経痛に効く痛み止めを処方することが多いです。

私の経験上、安静指示(ケージの中のみで生活)と2種類の痛み止めを使うことで9割の患者さんで1週間以内に震える症状の改善が認められます。しかし、症状が悪化する場合には、上記の触診や神経学的検査以外に、スクリーニング検査としてレントゲン検査、血液検査、エコー検査を実施することをおすすめします。

ちなみにこのヘルニアによる痛みが原因で震える場合には、痛み止めと安静指示で改善しても再発を繰り返すことがあります。そのため、症状が改善したからといってすぐに遊ばせたり、いつも通りの散歩に行くことはやめてくださいね!

短い時間から徐々に歩行距離を延ばすようにして下さい。

一度ヘルニアを起こすと痛みを繰り返すことがあるため、症状緩和を目的にサプリメントを内服するのもひとつです。当院では、2回以上同様な症状を繰り返した場合には、アンチノールの内服をおすすめしています。

まとめ

・犬が震える原因は様々。恐怖や寒さなどの生理的な原因から、内臓の異常、ヘルニアなど多種多様な原因がある

嘔吐や下痢、お腹がキュルキュル鳴るなどの症状を伴う場合には、内臓痛による震えの可能性があります。自分の免疫力で回復できないことが多いので、すぐに動物病院に受診して下さい。

首や腰のヘルニアによる痛みで震える場合には、安静(ケージの中のみで過ごす)と痛み止めで改善することが多い。上手く歩けないなどの症状がある場合には、手術の必要性もあるため、すぐに動物病院を受診してください。

駅前通り動物病院では医療機器を完備

血液検査機器

各種血液検査機器を完備しているため、院内で血液検査を実施できます。15分前後で結果がでるため、スムーズに治療に移ることができます。

デジタルレントゲン検査機器

デジタルレントゲンシステムを導入しているため、撮影からデータの描出まで、数分で終わるため、スムーズに治療に移行することができます。

歯科用デジタルレントゲン装置

2022年の秋に新たに歯科用デジタルレントゲンを導入しました。増加する歯周病の治療成績をより向上させるために、また客観的な情報を提供するために役立ちます。

高性能サージカルルーペ

歯周病治療などの際に、徹底的な歯周ポケットの洗浄、歯石除去やより質の高い治療を実現するために2022年10月に導入。

超音波検査機器

超音波検査により、お腹の中の臓器を評価したり、心臓の構造・機能を評価したりすることができます。プローブを当てるだけなので、痛みもなく動物たちのストレスを最小限に検査ができます。

内視鏡装置

犬の場合、内視鏡は全身麻酔をかける必要があります。しかし、お腹を開けることなく、食道、胃の中、十二指腸などを観察することが可能です。また、鼻の中や、喉の奥も観察することが可能です。

歯科用ユニット

3歳以上の犬の70-80%が歯周病と言われています。そのような背景の中、当院では歯周病の治療に力を入れています。より短時間で歯周病治療を実施できるように歯科用ユニットを導入しています。

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