動物病院では、犬の胆泥症の治療を食生活の改善とともに実施しています。
犬の胆泥症は非常に多くの犬で認められる異常ですが、胆泥が貯留するメカニズムはまだ完全に解明されていません。
そこで今回は現時点で分かっていることをもとに犬の胆泥症とフードの関連性について解説したいと思います。
犬の胆のうはどこにある?
犬の肝臓と胆のうの位置をイラストで表してみました!!


上記のイラストでイメージがつくと思いますが、胆のうはお腹の中にあり、肝臓に囲まれています。そのため、外からでは胆のうがどのような状態になっているのかわかりません。
胆のうの機能は胆汁を十二指腸に分泌することです。胆汁には消化を助ける役割があります。十二指腸に分泌された胆汁は腸から吸収され、再利用されています。
胆のうの構造を可視化するには、エコー検査がよく行われます。犬に仰向けになってもらいみぞおちの下からお腹を覗き込むようにエコーで観察します。

犬の胆泥症とは?

犬の胆のう内には正常であれば、サラサラの胆汁が入っています(液体)。しかし、この胆のう内に粘ちょう度の高い粘液性物質がたまるとドロドロになります(胆泥)。
厳密な泥になるメカニズムはわかっていませんが、胆汁成分の変化や胆のうの機能低下により液体から泥に変化していくのではないかと言われています。
この胆泥ですが、「胆泥症です」と診断を受けたらどうすればいいのか解説していきます。
胆泥症になりやすくなる病気があるの?
犬の胆泥症は、健康な犬でも認められることはありますが、病気の影響で胆泥症になりやすい場合もあります。
特に犬の胆泥症になりやすい病気として、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症があります。ホルモン検査で甲状腺ホルモンが低く甲状腺機能低下症の可能性があると言われた場合には、必ず腹部のエコー検査を実施することをおすすめします。
犬の甲状腺機能低下症については以下の記事を参考にしてくださいね!
肝酵素の上昇を伴わない胆泥の場合
このパターンが一番多いと思います。胆泥症自体は症状があることはほぼなく、健康診断で指摘されることがほとんどだと思います。
また、肝酵素の上昇を伴わない胆泥症の臨床的な意義も不明とされており、治療の必要性もはっきりと分かっていません。
比較的サラサラしている場合や胆泥が少ない場合➡フードを比較的低脂肪なものに変えてみてもらうかジャーキー等のおやつを減らすようにする
体勢を変えてもあまり動かない胆泥や泥の量が多い場合➡フードを低脂肪に変えることを強く推奨。ウルソデオキシコール酸の投薬を提案
いずれにしても低脂肪のフードに切り替えることが良いとされています。フードの脂肪率ですが、一般的に脂質として10%を下回るものを低脂肪食と呼んでいます。
ドッグフードの表記のところを見てみて下さい。ちょうど今自宅にあったドッグフードのラベルを見たら7.5%でした!!

ちなみに一般論として、ドライフードよりもウェットフードの方が低脂肪の傾向にあります。ドライフードをあまり好まない子や、ダイエットもしたい!という犬にはウェットフードはおすすめです!
肝酵素の上昇を伴う胆泥症の場合
このタイプの胆泥症は注意が必要です。先ほど述べたように甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症を併発している犬もいますので、血液検査で肝酵素が上昇しており、胆泥が認められる場合には全身的なスクリーニング検査をおすすめしています。
全身的な病気がなく、血液検査で軽度の肝酵素の上昇がある胆泥の場合、低脂肪食への変更とウルソの内服をおすすめしています。
肝酵素の上昇や胆泥自体が悪と決めつけているわけではありませんが、何もせずに放置するとさらに肝酵素が上昇したり、胆泥の量が増加したり、粘ちょう性が増したりします。
胆のう破裂などは死亡率が高い緊急性の病気のため、予防がとにかく重要です。食事の管理やウルソなどの内服薬でも胆泥症が悪化する場合、予防的に胆のうを摘出する手術を実施することもあります。
犬の胆泥症って治るの?
「胆泥症です」と診断されて気になるのは胆泥が消えるのかどうかだと思います。
結論から申し上げますと、胆泥症の治療をしている子で完全に消えた子はいません。画像上で、胆泥の量が減った子はいますが、完全に消えた経験はまだありません。
ごく少量の場合で積極的な食事管理とウルソ等の内服で消えることはあり得ると思います。ただし、そのような段階で発見されることが少ないのと、治療の意義がそこまで強くないと経過観察することが多いことが理由かもしれません。
そのため、胆泥症と診断を受けたら、付き合っていく必要がある異常(病気ではない可能性も)なんだと認識するようにして下さい。
胆泥の量にもよりますが、私の場合、半年に1回くらいのペースで血液検査とともにエコーで胆泥の状態を評価することが多いです。
まとめ
・犬の胆泥症にはホルモン異常が関係している場合もあるため、体調が良好でも一度は全身的なスクリーニング検査をおすすめ!
・肝酵素の上昇を伴わない胆泥症の臨床的な意義は不明。半年に1回くらいのペースで経過観察をすると安心かも。
・肝酵素の上昇を伴う胆泥症の場合には、低脂肪食への変更やウルソの内服を推奨
・犬の胆泥症は治る可能性は低いかも。治す必要性もケースバイケース。ただし、低脂肪食にすることで理論上は悪化を防げるか
犬の胆泥症は獣医師によっても意見が分かれます。胆泥症と診断を受けたら、別の先生の意見も聞いてみるといいかもしれません。
犬の胆泥症について気になる方はぜひ動物病院に相談してくださいね!







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