【獣医師が執筆】顎の骨が溶けることも!?犬の含歯性嚢胞について解説

動物病院では日々犬と猫の歯科処置を実施しています。歯科処置で多いのは、乳歯抜歯、歯周病治療が主ですが、時折「含歯性嚢胞」と呼ばれる病気に出会います。

この「含歯性嚢胞」ですが、歯周病とは異なり、感染を伴うことは多くはありませんが、骨を溶かしてしまうこともある病気のため、積極的な治療が必要になります。

そこで今回は、犬の「含歯性嚢胞」についての解説と実際の治療例をみてきましょう!

犬の歯の数が少ない場合には、含歯性嚢胞を発症する可能性が高いため注意が必要です。早めに獣医師による診察を受けるようにして下さいね!!

目次

犬の含歯性嚢胞とは?

犬の含歯性嚢胞は、埋状歯(歯肉に埋まっている歯)が原因となり、歯冠周囲の上皮が嚢胞壁となり、液体を産生しつつ、歯の周囲の骨・組織を溶かしながら嚢胞が大きくなる病気です。

上顎・下顎犬歯などの歯冠が大きい歯の場合、嚢胞が大きくなるにつれて周囲の骨を溶かし、骨折するリスクもあります。

永久歯が完全に出てこない場合に発生します。

含歯性嚢胞になりやすい歯、なりやすい犬種は以下の通りです。

・下顎の第1前臼歯(犬歯の後ろの歯)に多い

・経験的には、上顎、下顎犬歯、切歯にも発生

・チワワやフレンチブルドッグなどの短頭種で多い

犬の含歯性嚢胞の症状・診断・治療は?

嚢胞を形成し、ある程度液体が溜まってこないとなかなか気づくことは難しいです。

本来生えているはずの歯の周囲の歯肉粘膜に波動感(ぷよぷよする)をもつ膨らみがみられることで気付かれることが多いです。

完全埋状歯(歯肉の下に全歯冠があるもの)だけでなく、不完全なものや半分くらい出ていたとしても嚢胞を形成することがあるため、口腔内のレントゲン検査は有用です。

診断は口腔内レントゲン検査になります。レントゲン検査では、埋状歯とその周囲の骨・組織が溶けているような所見がみられます。

犬の口腔内レントゲン検査は、基本的に鎮静もしくは全身麻酔下で実施することになりますので、当院では口腔内の視診後に、診断・治療を全身麻酔下で同時に行うことがほとんどです。

治療としては、原因となっている埋状歯の抜歯とその周囲の嚢胞の壁を切除することです。歯の抜歯だけでは、嚢胞壁が再発してしまい、また膨らんできてしまうため、初回の手術で綺麗に嚢胞壁を摘出することが重要です。

嚢胞壁の摘出には、拡大鏡などの器具が必須になります。当院では、高性能ルーペを使用してすべての歯科処置を実施していますので、ご安心ください!

犬の含歯性嚢胞の実際の治療の流れ

当院で最近行った犬の含歯性嚢胞の治療の流れをみてみましょう!

STEP
犬の含歯性嚢胞の見た目
赤丸で囲んだ部分が腫れており、
触るとぷにぷにしている
赤丸で囲んだ部分は歯槽骨が溶けている
STEP
歯肉切開と埋状歯の抜歯

 

白丸で囲んだ部分に見られるのが埋状歯
抜歯したあと。
歯槽骨が溶けていた隣の切歯も同時に抜歯
STEP
歯肉縫合して終了

 

埋状歯を抜歯したあと
歯肉を吸収性の糸で縫合したところ

犬の含歯性嚢胞の治療にかかる費用は?

犬の含歯性嚢胞の治療にかかる費用ですが、以下が目安になります。

・麻酔前検査代(胸部レントゲンや血液検査等):10,000円~

・全身麻酔代(麻酔時間や使用する薬剤で変動):10,000円~

・歯科用レントゲン撮影代:3,000円~

・抜歯及び嚢胞壁の摘出代(抜歯する歯によって異なる):40,000円~

・術後の抗生剤や鎮痛剤などの内服代:1,000円~

総額で70,000~100,000円前後になることが多いです。骨吸収が重度になる場合には、骨充填剤の挿入などを実施します。その場合には、+20,000円ほどかかります。

犬の含歯性嚢胞の予防は?

基本的には幼少期から口腔内の検査をすることで埋状歯がないかどうかを確認することが重要です。

特に欠歯(見た目上歯が生えていないところがある)がある場合には、完全にないのか、それとも歯肉の中に埋まっているのかを避妊・去勢手術の際に口腔内レントゲンを撮影することで予め発見できます

もし完全にもしくは半分埋状している場合には、嚢胞壁をつくる前にその原因となる歯を抜歯することが重要です。

含歯性嚢胞の発生が多いとされているチワワちゃんやフレンチブルドッグなどの短頭種の子は注意してみて下さいね!!

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