東大宮にある駅前通り動物病院では、日々犬のアレルギー疾患の検査、治療を実施しています。当院では、犬のアレルギー性の病気を疑う際には、最新の獣医皮膚病学の教科書に基づいた診断プロセスを踏んでいます。
もちろん全頭でアレルギー検査を実施しているわけではありません。特に1歳未満の若い犬で食物アレルギーの症状に該当する場合には、食物アレルギー検査をせずに試験的に食事の変更をご家族の協力をもとに実施することもあります。
しかし、たまに「犬の毛でアレルギー検査って信憑性あるんですか」と言われることがあるので、いったいどんなものなのか興味本位で調べてみましたので、個人的見解を書いてみたいと思います。
決して犬の毛での検査を完全否定しているわけではありませんので、ご了承下さいませ。
結論➡➡
犬の毛を使ったアレルギー検査に信憑性があると言い切れる獣医師はいないと思います!!
もしいたらぜひ意見を聞いてみたいと思いますので、お問い合わせくださいませ。
毛を送るだけでアレルギー・不耐症がわかる検査とは?
早速グーグル検索で「犬 アレルギー検査 毛」で調べてみたところ、「アレミッケ」という検査キットがヒットしましたので、これについて詳しく調べてみました。
概要はこちら➡➡
・体毛を20本くらい抜き、検査センターに送るだけ!
・アメリカの獣医師が推奨している検査である!
・383項目のアレルゲンを調べることができる!
・バイオレゾナンス技術なるものを利用して検査をしている!
簡単に説明すると、動物病院に行かずに、犬の毛を検査センターに送るだけで、アレルギー・不耐症かどうかがわかるということですね!
動物病院を介さないため、おそらく獣医師でも知っている人はいないのではないでしょうか。そのため、動物病院で「アレミッケ」を使った検査を行っているところはないと予想されます。
それにしても検査項目が多すぎると対策が大変な気もしますね!
毛でアレルギー・不耐症かどうかわかるの?
獣医免疫学や獣医皮膚病学の教科書等には、この「アレミッケ」が実施しているバイオレゾナンス技術は載っていませんでした。
ちなみに公式サイトには以下のように記載されています。
被毛(毛髪)は、大別すると皮膚の表面に游離している部分である毛幹部と皮膚の内部に潜っている毛根部で構成されており、毛根を皮膚内に包んでいる部分を毛嚢といいその先端の膨らんだ箇所を毛球と呼びます。さらに、その下部は凹んでいて毛乳頭を包んでいます。毛球には毛細血管(※1)が入り込んでおり、毛乳頭でできている毛母細胞が成長しながら角質化し毛髪となります。
https://allergy-pro.jp/より
そのようにつくられた被毛・毛髪。そこには蓄積されたデータ=エネルギーが存在します。
アメリカの最先端技術である人用の心電図・脳波測定原理に基づき開発した分析検査機器にて、体毛の細胞が持つ微弱な【エネルギーを測定、アレルゲン物質のエネルギーと対比分析】【生体共鳴検査】にて結果を導き出します。
このバイオレゾナンスという技術自体、私は初めて聞きましたが、人間でもバイオレゾナンスセラピー等は行われているみたいです。
バイオレゾナンスセラピー自体は生体に対して行う治療みたいですので、犬の体に直接行うなら効果はあるのかもしれませんが、検査として使えるのかと言われると疑問が残ります。
教科書的なアレルギーというものは、免疫が関与しています。そして、アレルギーの発症に関与するものはIgEとリンパ球です。現時点では、これらを用いた検査がゴールドスタンダードにはなります。
そのため、毛でアレルギー・不耐症かどうかわかるか?と言われれば、現時点では獣医療でエビデンスのある検査ではないと答えるでしょう。
不耐症自体は犬でもあるとは思います。人間だと乳糖不耐症が有名ですが、この乳糖不耐症は検査方法が確立されています。不耐症はアレルギーではないので、アレルギー検査は実施しませんが、このアレミッケで使用されているバイオレゾナンス技術も使用されてはいません。
犬の食物アレルギーについて獣医学的な知識を知りたい方は以下の記事を参照にしてください↓↓
アメリカの獣医師が推奨しているって本当?
公式ホームページに、アメリカの獣医師が推奨との記載も見かけました。こちらの獣医師が勤務している動物病院のホームページも拝見してみましたが、実在する人物ではあるみたいですが、「アレミッケ」に関する情報は確認できませんでした。
そのため、アメリカの獣医師が推奨しているかどうかの真偽は不明です。
「獣医師100人が推奨!」と「獣医師1人しか推奨していない」だと意味合いは異なってくると思います。
しかし、このアメリカの獣医師以外が推奨している事実は確認できませんでしたので、専門家の認知度、信頼度はまだそこまでないのかもしれません。
獣医師といっても、日本ですら小動物医療に従事している獣医師は1万人以上いますので、一人くらいが推奨していてもおかしくはないと思います。
1万人いれば、1万通りの考え方がありますので。
「アレミッケ」の信憑性は?
獣医師の考え方も千差万別ですが、飼い主の考え方も千差万別です。獣医師は数万人程度しかいませんが、飼い主はその何十倍といます。
信じるか信じないかはあなた次第です。世の中まだわかっていないことはたくさんあります。現在の検査システムだけではわからないことも正直たくさんあります。
ただ、事実として知っておいてほしいことは、「アレミッケ」を推奨している日本の動物病院は聞いたことがないです。
個人的な見解としては、「動物病院に頼らずにどうにかしたい」という人向けなのではないでしょうか。動物病院に頼らず、自分で正しいと思って行動し、検査をしてそのフィードバックをもとに食生活を見直す、住宅環境を改善するなどして、アレルギー・不耐症が治癒するのであれば、いいと思います。
獣医師的なコメントをすると、「アレミッケ」に3万くらいお金をかけるなら、まずは動物病院で獣医師の診察を受けて、アレルギー検査をする必要性があるのか話を聞くところから始めた方がいいと思います。
場合によっては、獣医師の環境改善や食生活のアドバイスを聞き入れ、アレルギー検査をしなくても愛犬のアレルギー・不耐症の症状が改善するかもしれませんから。
ただ、獣医師によっても見解が違ったりと、迷われることも多いと思います。そのため、この獣医師のいうことなら信頼しようと思える人を見つけることも大切です。
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