東大宮にある駅前通り動物病院では2022年に本格的に犬と猫の歯周病治療を開始してから、2024年現在、100件近くの歯周病の治療を全身麻酔下で実施してきました。治療の内訳では抜歯を伴う治療が70%以上です。
そして治療の際の抜歯の本数なのですが、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。歯医者に行って、歯周病ですと言われても、歯を抜くことは滅多にありませんよね?
しかし、現実的には、抜歯が1本だけで済んだ症例は、抜歯をした症例の中で数頭のみでした。それ以外の子は、1本以上抜歯を必要とし、平均して10~20本くらい抜歯が必要なケースが多かったです。
高齢になり、歯石が付いてきたなとか口臭が気になるようになってきた場合、犬の歯石取りを考えると思いますが、歯周病の程度としては進行していることが多いです。
というわけで、今回は犬の歯周病における獣医師とご家族のギャップについてお話したいと思います。
ほとんどのご家族の方は、歯周病治療について、抜歯が多数必要になるかもしれないとお伝えするとショックは受けるものの、治療の必要性を理解し、愛犬のために全身麻酔下での治療を受け入れて頂いています。
しかし、中にはどうしても受け入れられないという方もいると思います。そのような方は、ぜひ何人かの獣医師の意見を聞いてみることをおすすめします。
様々な歯周病治療に関する記事は以下からチェック!!!
犬の歯周病治療は口腔外科?
世間的なイメージとして、「歯の病気=虫歯」を想像される方が多いと思いますが、犬の場合、歯の病気で虫歯が占める割合は10%以下だと思います。
犬の場合、「歯の病気=歯周病」が圧倒的に多いです。皆さんが想像する歯周病はどんな感じでしょうか。歯肉が少し赤いくらいの歯肉炎、歯に少し沈着した歯石などでしょうか?
そのくらいであれば、我々獣医師もいいなと思います。しかし、現実はもっと厳しく、「犬の歯周病=抜歯が必要」なレベルが過半数を占めます。
我々が最近、麻酔下で治療している歯周病のレベルは、「歯を支えている歯周組織の炎症が重度で、歯槽骨が溶けている」レベルの重度な歯周病が多いです。
歯槽骨が溶けているような歯周病では、歯周病の悪化により顎の骨折を予防するため、歯の根っこの感染による根尖膿瘍の予防のために多数の抜歯処置が必要になることが多いです。
そのような処置は、皆さんがイメージする歯医者での治療ではなく、全身麻酔をかけて口の中の手術をする口腔外科の治療の方がしっくりきます。
歯周病治療で歯を残せるかどうかはご家族の意向にもよる
歯周病治療の際には、以下のことをご家族にお話しするようにしています。
・犬の歯周病は見た目では判断できません。全身麻酔をかけた状態で歯周ポケットの深さや口の中のレントゲンを撮影して、客観的な情報を得ることで正しい診断ができます。
・抜歯の適応基準というものも存在しますが、ご家族の意向は最大限考慮します。この歯周病治療を期に、毎日歯磨きをして歯の状態を良好保つことができるのであれば、なるべく残せる歯は残します。
・一般的に残すことを推奨しないような歯は次の通りです。
・根尖膿瘍の場合
・内歯瘻、外歯瘻を発症している場合
・動揺(グラグラしている)歯
・根っこが2つ以上ある歯で根っこの分岐部が見えている場合
・処置後も歯磨きが性格的に困難である
歯周病治療に対する獣医師の考え方
歯周病治療の目的は、以下の通りです。
・歯周病による症状の改善(口の痛み、不快感、口臭からの解放など)
・根尖膿瘍、口鼻瘻がある場合には、その根治
・歯周病の悪化による根尖膿瘍、口鼻瘻の将来的な発症予防
・歯周病菌の全身への悪影響(肝臓、腎臓、心臓等の腫瘍臓器への影響)を軽減する
上記の目的をもって我々獣医師は、歯周病の治療を実施しています。ただ犬の歯周病治療では、大きな制約があるのも事実です。
それは、全身麻酔をかける必要があること
全身麻酔の回数に制限はありませんが、本人の身体的、精神的ストレスを考慮すると少ない方がいいのは事実です。みなさんがよく心配されることに「高齢」が挙げられますが、年齢はあまり気にしていません。
健康状態を一番気にしています。心臓病がある、腎不全がある、肝不全がある、最近元気がないなど日常生活を医療的介入なしで生活することができない子ではかなり慎重になるのは事実です。
そのような背景もあり、高齢の子の歯周病治療では、なるべく「その1回」で治療を終了できるように心がけています。
わかってはいてもやはり心配という場合、犬の全身麻酔のリスクについて以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみて下さい!
まとめ
・犬の歯周病治療では、抜歯の必要性がある症例も多く、歯医者のイメージよりも口腔外科のイメージが適切なことが多い
・歯周病治療で歯を残せるかどうかは、ご家族のその後の歯磨きなどのメンテナンスへの意欲にも大きく影響を受ける
・歯周病治療は犬の健康寿命を延ばすうえで、非常に大切だが全身麻酔が必要。当院では、「その1回」で麻酔下での治療を終えられるように心がけている
今回の記事はいかかでしたか?この記事をきっかけに「犬の歯周病」に興味を持つ機会になれば幸いです。
歯周病に関して、不安がある方はぜひ動物病院に相談してくださいね。
駅前通り動物病院での歯周病治療の特徴
丁寧でわかりやすい治療説明
犬の歯周病治療には全身麻酔が必要であり、気軽に実施できるものではありません。
そのため、治療前に現状考えられる治療内容、治療経過等をじっくりと話したうえで治療に移ります。
これまでの治療経験等も画像や歯の模型等を使ってわかりやすく説明します。
歯科専用器具を完備
高性能超音波スケーリング、歯科用高速ドリル、歯科用レントゲン、歯科用サージカルルーペ等の最先端、最新の歯科専用器具を取り揃えています。
高倍率ルーペ、歯科用レントゲンを導入している動物病院はまだほとんどありません。
質の高い治療
駅前通り動物病院で犬の歯科治療を2021年に開始してから100頭以上の歯周病治療を行ってきました。
また、常に犬にとってより負担の少ないかつ効果的な治療方法を追求し続けています。
ご家族が納得できる、満足できる治療を提供し続けています。
可能な限り、生涯での麻酔回数を減らせるような治療方法をご提案しています。
治療後のデンタルケアサポート
歯のメンテナンスの仕方を必ずサポートします。
いきなり歯磨きを指導するのではなく、まずは顔周りのマッサージから。
徐々にステップアップできるようにアドバイスしています。
一方通行にならないように必ずご家族との対話を大事にしています。
駅前通り動物病院での歯周病治療の流れ
STEP1 診察(口の中、全身チェック)
歯周病治療では、まずは視診を行い、大まかな口の中の状態を確認します。歯の本数や、生え方、動揺の有無、歯石の付着具合、歯肉の炎症の程度、歯肉ラインなどを確認します。
また、あわせて全身の状態の確認も行います。口の中以外の異常がないかを確認します。
この時点で、大まかな治療の内容、治療後のフォローアップ、費用等のお話を丁寧に説明します。
STEP2 麻酔前検査(当日実施)
全身麻酔をかける前の評価を実施しています。これは当日に実施することが多いです。主に、血液検査、胸部レントゲン検査、エコー検査で心臓や肝臓、腎臓等の主要な臓器機能を評価します。
麻酔前検査で明らかな異常が認められなかった場合は、全身麻酔下での歯科処置を実施します。
STEP3 スケーリング&歯科レントゲン検査
全身麻酔をかけたら、まずは口の中を観察します。その際に、歯周ポケットの深さや、歯の動揺の有無を確認します。その後、スケーリングを行い、歯に付着している歯石を除去します。歯石を除去し終わったら、必要に応じて、歯科用レントゲンを撮影します。
歯科用レントゲンは、歯の評価、歯を支えている歯槽骨の評価のために行います。
STEP4 必要に応じて抜歯等の処置
抜歯適応の歯がある場合には、抜歯を行います。抜歯には、歯肉切開をせずに抜く閉鎖法と歯肉切開を行い抜歯を行う開放法の2つがあります。
歯肉切開をせずに済む場合にはあえて歯肉切開は行っていません。どちの方法をとるかは、歯の状態にもよります。
開放法で抜歯をした場合には、歯肉縫合をします。吸収糸で縫合するため、抜糸の必要はありません。
歯科処置後の管理
歯科処置は、基本的には日帰りになります。麻酔後は鎮痛をしっかり行い、帰宅当日の夜からお水とご飯は食べられる状態でお返しするようにしています。
抜歯本数が多い場合や、全身状態に異常がある場合には1泊2日で実施しています。
処置の内容に応じて、今後のご自宅での歯のケアについてアドバイスをさせて頂きます。
歯周病治療の費用の目安
・麻酔前検査:10,000円~
➡血液検査、胸部レントゲン検査(必要に応じて心臓エコー検査、腹部エコー検査)
・全身麻酔代:10,000円~
➡静脈確保、点滴、抗生剤、鎮痛剤等
・スケーリング代:25,000円~
➡歯石除去、ポリッシング等
・抜歯代:10,000円~
➡本数、部位、歯肉縫合の有無により変動
東大宮、大宮、土呂、上尾エリアで歯科処置を検討されている方、ぜひ当院へご相談くださいませ。
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